◆中国の筆架叉(ひっかさ)・鉄尺(てつせき)・双侠鞭(そうきょうべん)
◆日本内地では南蛮十手・満字転木(まんじてんき)などと呼称される殆ど同じ物。
各部の名称 写真説明のとおり。
※当館製作の釵は、鉄製のために、そのままにしておくと錆を発生します。
元々が、「隠し武器」ですので、目立たないように黒色ペンキ塗装を施していましたが、
最近は、拳銃などの塗装に使われる「ガンブルー塗料」を使用しています。
上記の写真の釵は、ガンブルー塗装前の状態です。
※2023.03追記
塗装は、ガンブルー類を用いた「黒色」と、研磨したままの「銀色」の2種類の中からお選びください。
琉球古武道保存振興会内地本部長の故井上元勝先生の唯心館井上空手道場の正面床の間の刀掛けに1組の釵が掛けられていました。
柄頭は、切り子の形でした。
琉球古武道保存振興会相談役の故坂上隆祥先生の著書のなかで、演武する御子息の所持する釵が、これと同形です。
最近は、模造刀と同じような合金製材質のものが販売されていますが、組手などでは曲がりますので、演武用です。
その他、ステンレス製・ゴム製のものも販売されています。
(目的=鍛錬用・組手用・演武用・練習用など)
太い・大きい・重い、というようなものを、力の余った若い時期や、入門時に好みますが、その稽古量が累積するうちに、自分に合った重量に気がつきます。
昔は、自然の錆びが生じて、その錆を取り、また錆びが出て、また取る。を繰り返しているうちに、段々と細く・軽くなり、自然と自分の年齢に合った釵に変化していったようです。
大先輩・諸先生方の釵を拝見すると、意外と細身なのです。
現代は、塗料やメッキによって、錆が出ることはありません。
一般的に総重量は、約500gから約700gの間です。
柄部=元(枝部)より柄頭の長さは、逆手持ちしたときに、人差し指が柄頭に触れない程度です。
柄頭が切子形であれば、柄頭の中央部まで指先が有効利用できます。
物打部=元(枝部)より先までは、逆手持ちしたときに、肘より3cm程出る方がよいとされていますが、実際には肘の長さで十分です。
参考=徳川時代の武士の護身用具に「吾杖」(阿梨棒、または切り子の棒)というものがあります。
このものは、頭部(柄頭)と刀剣の鍔に相当する箇所(元)にも、切り子形球形の突起が付けられています。
釵に切り子形球形を取付けることによって、研削加工を行い、全体のバランス調整に役立ちます。
殆どの釵の型の第一動作は、釵を逆手持ちしていて、順手持ちに替える。
相手の棒を払うときもあれば、顔面攻撃のときもあるが、いずれにせよ居合道の抜き打ちのように、素早く・力強く・正確でなければならない。
この「裏打ち」という動作がスムーズにいくための構造状態をいいます。
逆手持ちで親指根元を元(枝部)に掛け、前腕を床と平行にして、掌を開いたときに、約25度くらいが理想的なバランスといわれています。
すなわち、「裏打ち」「外受け」などが素早くできるのです。
分かり易く写真で説明しますと、壁に掛けて飾ったようなときに、
左写真のタイプは見た目が良いですが、使い難いタイプです。
右写真のほうがバランスが良くて使いやすいタイプです。
八角形で、先端に向かってテーパー形にして細くする。
手の形・大きさに合わせて、使いやすい形を選ぶのがよいのです。
逆手で持ったときに、親指を痛めないように、物打ち部分と同じ八角ではなくて、基本的には丸形です。
長さは、物打ち部分を有効に利用するためには、短い方がよいのです。
太さは、元(枝部)に近い部分は太いほど使いやすく、物打の中間部当たりの太さが適当です。
翼が曲がり終わって、物打と平行になる部分は、爪に向かってテーパー形で細くします。
翼の爪は、内側に曲げると手首に当たるので、真っ直ぐにするか、外側に曲げます。
空手修行者は、引き手が横拳になる習慣ですから、うっかりすると脇腹に刺さります。(釵の引き手は、縦拳が原則です)
ご了承ください。
物打で打撃したときに最も力が入るためです。そして翼の内部に入った棒(棍)に、親指が当たらないためでもあります。
そのために、この部分は平らである必要があります。
使っていれば錆は大きくならず、使うほどに手の脂で、その錆は滑らかになっていたといいます。
現代は以下のようなものがあります。
① 一旦錆を発生させて、それを磨き上げて茶色系にしたもの。
② 磨き上げて白銀色系にしたもの。
③ 塗装して黒色系にしたもの。
④ 銀色メッキにしたもの。
⑤ 拳銃と同じように、ガンブルー塗料したもの。
型の「湖城の釵」にあるように、背面の腰に差した釵は、1本を手裏剣投げで相手に投げつけた後の補充用として使用します。
または、組手などで落としたときの予備として使うときもあります。
約650gを重い・軽い、の境として2種類を持ち、重い釵は練習・鍛錬用。軽い釵は組手・演武用として、使用を分けることが望ましいのです。
即ち、2種類(二組)を所持することにより、計4本となり、本来の基本の3本一組(1本は背面の腰に差す)を満足させることが可能になります。
水分を含むと、堅くなります。
当館では、その黒色の紐を使用しています。
バランス釵の持ち方
強く握りしめる必要はありません。
親指、中指と人差し指に力が入っている
親指の上にヤジロベーのようにのせる。
ゆれないように小指でおさえる。
この持ち方にすると、素早く回転する。
そして、素早く「切子打ち」ができる。
接近戦にも使える。
当館の標準品としては
総全長 約52cm 総重量 約600g~650g ですが
その他のサイズでも製作します。
令和2年4月現在
【釵の「切子形状の柄頭」について】 2019.07.21
当館製作の釵には、「切子形状の柄頭」が付いていますが、
それについての問い合わせがありましたので、説明します。
昭和40年代の、井上元勝先生や坂上隆祥先生の釵には、切子形状の柄頭がありました。出版された書籍にも、その写真が載っています。
琉球古武術が普及して、釵が市場に出回った頃には、その形状は無くなりました。
殆どが丸形となりました。
それは、この部分の製作には、非常に手間暇が掛かるからです。
この切子形状の柄頭によって、各自の釵のバランス調整をしていたものが、バランスを無視して、大量生産の安易さを選んだものと思われます。
昭和58年発行の 図解コーチ 護身杖道 鶴山晃瑞著 成美堂出版 に以下の内容が掲載されています。
「吾杖は、またの名を阿梨棒(アリボウ)、あるいは切子の棒という。
鉄製で、頭部に切子型球形の手だまりをつけ、刀剣の鍔に相当する箇所にも、切子型球状の突起をつけた、四角、六角、八角の鉄棒である。
長さは3尺以上4尺ぐらいまでである。
頭部は太く、先に近づくにしたがい細くなり先端がやや尖る。二個の切子の間、すなわち握る柄様の部分には、皮、あるいは紐をまいたものもある」