三節ヌンチャク

故井上元勝先生が指導のために、道場に来られるときは、必ず手に、心月流手裏剣術の手裏剣の入った袋と、小型の三節ヌンチャクを握って来られました。
普通のヌンチャクと言えば、双節棍ですが、井上元勝先生の手にしていたヌンチャクは、
三節棍でした。

それは、
全長は、普通のヌンチャクと同じ長さです。
折りたたんでいるので「小型」で、「携帯用」「護身用」とも思われる物でした。
樫の木よりも重くて硬い木材で、黒檀とか紫檀とかという物だと思われました。
末端部分を握れば、通常のヌンチャクと同じようになり、
末端部分と中間部分を一緒に握れば、小さなヌンチャクになります。

当館で、それを金属製で製作してみました。
懐に、ポケットに、納まるので「護身用・携帯武器」「隠し武器」
と宣伝しています。

釵のお問合せについて

当館製作の釵をご希望の方は、ご注文の問合せがあれば、ご相談に応じますが、
事前に、下記の内容をご検討くださいますようにお願い致します。

まずは、当館のホームページの「釵の販売」と「古武器の製作・販売」をお読みくださいますようにお願い致します。

何方かの釵を借りて、その釵が貴方に適合していれば、そのサイズをお知らせください。
その釵よりも、「ここを長く」とか、「ここを短く」とか、ご希望の数値があれば、
それをお知らせください。

参考として、
柄の長さ(A):当館の標準では10cm~11cmです。
物打の長さ(B):その方の体格によって決まります。
翼の内側の幅(C):当館の標準では、男性は4.5cm。女性は4.0cmです。
翼の枝部の長さ(D)は、(C)の幅によって、自然に解ります。
以上より、長いか?短いか?を、ご検討ください。

何方かの釵を借りて、台所にある小型の計量器で重量を量り、その釵よりも、
「もっと重く」とか「もっと軽く」とかをご検討ください。
年齢によって、その希望値は変わりますので、長い目で見た重量をご検討ください。
そして、例えば「600g~650g」とか「650g~680g」とかとして、幅のある数値にしてください。
尚、一般市販品の釵や、当館製作の通常の範囲内の「サイズ・重量」を超える釵は、
追加料金を頂きます。

釵の仕上がりの色は、ガンブルーの黒色、または、素地の銀色のどちらかを選んでください。錆びのある古風作りも承ります。

ビタリとご依頼のサイズ・重量にはなりませんが、ご希望に添いたいと思います。
ご依頼から、約1週間で、お手元に届きます。

ヤマト運輸のクロネコヤマト便を利用しています。
指定の時間帯がありましたら、それを指定してください。
確実に、本人様のお手元に届きますように、「着払い」としています。

必ず、何等かのサービス品を添付しています。
お楽しみに。

釵の重量

 その昔、琉球の「唐手家」は他の「唐手家」から挑戦を受けたそうです。
「野試合」「掛け試合」というものです。
指定された場所に行きますが、その時に~~~
「もしかして、相手は複数かも?」「もしかして、武器を所持して来るかも?」
そういう懸念が生じました。
用心のために、外観からは見えない、小型・軽量の武器を隠し持って出かけた方も居たようです。

◎手に持つか、腰に差すか、相手に見えない程の、携帯可能な小型武器。
◎ジャックナイフのように、いきなり飛び出す武器。
◎二の腕に隠れて見えない武器。
◎繰り出すと、倍の長さになる武器。
◎遠心力を利用して、威力が出る武器。
そうして、身近な農具を改良して、武器としたそうです。
ヌンチャク・トンファー・鎌・釵等がその武器です。
最初から、「隠し武器」だったのです。
ですから、重い物は所持しなかったそうです。
武器となれば、大きい・重い、というほうが強力で威力がありますが、目的が異なるのです。

某会の大会規約では、男子は片方650g以上。女子は片方550g以上。と定められているそうです。
注文を受けますと、殆どの方が、自分の体重の100分の1程の重量を希望します。
しかし、それは若壮年層で、ある程度の年齢の方・師範級の方からは、「なるべく軽く」という依頼が圧倒的です。
因みに、某有名団体の理事長の依頼は、500gでした。
「そんなに細い釵でいいのですか?」と聞きますと、「ガツンと受けるのでは無くて、“流し”という技があるのだから、大丈夫。先端は、なるべく尖らせて欲しい」ということでした。

当館への問合せでは、「私の団体には、重量制限は無い」「大会には出場しない」「元々が隠し武器なのだ」
などのご意見もありまして、600gから650gの注文が殆どです。
最近は、約600gの希望者が多くなりました。

釵の価格

いつも当館のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
同様のお問い合わせをいただくことが増えてまいりましたので、こちらでもご回答させていただきます。

その昔、当館開設にあたり、釵を20組(40丁)の釵を購入しました。
それが、どれ一つも同じ重量の物は有りませんでした。
釵のバランスは、全く成り立っておらず、それぞれの角度は全て異なっていました。
どの2丁を組み合わせても、1組にはなりませんでした。

 そこで、自分で製作することにしました。
井上元勝先生より頂いた釵。
井上空手道場で見聞した数々の古武器。
当時の先輩からの話やご指導。
参考文献・資料の勉強。
以上を参考にして、製作を始めました。

 2丁1組の片方が出来て、もう片方を、それと全く同じ形状・重量に製作することの難しさを実感しました。
数々の失敗を体験して、ようやく商品になるようになりました。
しかし、その製作日数は約1週間掛かりました。
工具を新機種に替えても、製作の実働時間は極端には短縮できませんでした。
それでも、数々の製作をしている内に、何とか要領を掴むことができまして、
3日~4日で完成させることができるようになりました。

 最低労働賃金で計算しても、金額では、大量生産をする企業には敵いません。
そこで、製作労賃を重視しない製作費用の計算にしました。
現在は、標準的サイズ・重量の範囲内の釵は、2丁1組・¥26,000―です。
それよりも、大型サイズや、更に重い釵は、追加料金がかかります。

 通常は、「黒色仕上げ」と「銀色仕上げ」です。(金額は同じです)
古風・琉球風というのか、鉄錆を発生させての「茶色仕上げ」製作は、更に1週間の作業が必要です。(金額は、3,000ーの追加となります)

 ご注文を頂き、納品するときは、必ず何等かのサービス品を同封して送ってきました。
「どうしても実物を見たい!」と言う方が居て、直接来られる方が居ります。
態々、脚を運んでくれたという思いで、そういう方には、何等かの古武器を1個差し上げていました。
その時に、数々の在庫の古武器を直接見て・手に触って・・・・
人格の変わる方がいらっしゃいます。
子供が玩具を欲しがるかのように、全てが欲しくなってしまうのです。
今後は在庫品をなくして、受注品のみの製作をします。

銀色の釵の製作

鋼材に黒皮(ミルスケール)があり黒色ですが、釵を製作していますと、研削・研磨の過程で、銀色になります。
丁寧に研磨すると、日本刀のような輝きを出します。(上段の写真)
これを形演武で用いると、刃物を持っているかのように見えます。
薄い油膜を塗布するだけで、いつまでも光っています。

 その昔、琉球では、ペンキ・メッキの無い時代ですから、自然の錆びの発生を、布で拭き取り、また錆びたら拭き取る。これを繰り返して、茶色の釵にしていました。(下段の写真)
銀色の釵が飽きたら、油膜を取り除いて、上記の方法で、茶色にできます。

 詳しい事情は知りませんが、ガンブルー塗装が輸入停止になりました。しかし、相当品が発売されましたので、黒色仕上げも引き続き可能です。

釵の注文

釵の購入に関してのお問い合わせを有り難うございます。
当館の製作する釵は、ご希望の長さ・重量・手の大きさ等を確認してからの
受注生産品で、オーダーメイドの釵となります。

[長さ]
丸型鉄棒は5.5mを定尺として販売されています。
これを50cm毎に切断していけば、11本の釵が出来ます。
よって、既製品は無駄を無くすために、50cm以下で製作しています。
しかし、当館では、ご希望の長さで製作致します。

[バランス]
まず1本を製作して、それを全く同じ形状・重量になるように、もう1本を製作します。
物打ち部分は、バランスを考慮しながら、丸棒を八角のテーパー状に、手作業で研削します。
この「八角形」には、昔からの深い意味がありますので、疎かにはできません。
「テーパー状」も、捕り方の御用十手とならないように、疎かにはできません。
そのときに、ちょっとした手加減で、若干の重量の差が出てしまいます。
簡単に終わると、バランスが45度程になったり、左右の重量を合わせようとして、研削に夢中になっていると、平行に近くなったりの失敗があります。
因みに、平行に近いと、逆手から順手に持ち替える一瞬に、釵を床に落としてしまうということもあります。

 因みに、棒(棍)術では、組手は棒(棍)の先端を相手の眼に合わせて構えます。
釵術も同じく、構えたときに、柄頭が自然に相手の眼に向かっているかのような角度が必要です。

以前は、注文を受けた釵を、もう1組製作しておりました。
また同じような注文があるかもしれない! そう思ったからでした。
約10~15g程の差の釵が、何組も出来ました。
どうしても、現物を見てから購入したい! とおっしゃる方がいらっしゃいます。
もう1組と製作しておいた釵の5組程を長テーブルに並べます。
何方も同じ行動をしました。そして、共通するところがありました。
約1時間をかけて、次から次に手にとって、振り回してみます。
私は、黙って見ているだけです。
そして、その中の1組を決定します。
初心者・若者は、その中で、一番重い釵を。
経験者・熟練者・壮年は、その中で、一番軽い釵を。
不思議にも、何方も同じように行動して、釵を決定しました。
何故か? 並んだなかの、中間重量を選ぶ方が少なかったのです。
現在は、黙って1時間を費やすのが苦痛ですので、見学購入は遠慮していただいています。

[翼の内幅]
 同じ身長・体重でも、手の大きさが異なります。
若いときから、肉体労働などをなさった方は、手が分厚くて大きい方が大半です。
狭くては、回転が難しい! 広くては、しっくりしない!
ここは、重要な部分です。
HPの中に、A・B・C・Dと図示してありますが、その「C」(翼の内幅)の長さを知りたいのです。
なかなか即答できる方はいらっしゃいません。
しかし、直接拝見しなくても、だいたいのサイズは予想できます。

[長さは?重さは?]
 私の方から、上記の質問をしますと、誰もが答えられません。
当館のHPで、説明はしてあるのですが、「約3cm長く」が不安になるのでしょう。
HPの中に、A・B・C・Dと図示してありますが、その「B」(物打)の長さを知りたいのです。
その昔、身を守るために、身体より長く!
釵以外でも、殆どの古武器が、約3cm長く。と書かれています。
2寸では長いかな? 1寸くらいかな! そういうことで始まったように思います。
ですから、1寸 = 約3cm なのだと思われます。

自分に合った重量は、誰もが即答できませんでした。
「手首を鍛えるために重い物を」そんな必要はありません。
手首を鍛えなくても使えるのが釵です。
逆に、手首を痛めないように、しましょう。
手持ちの釵や、友人の釵を借りるなどして、台所用の計量器で重量を計測して、どれくらいの重量が自分に合っているのかを考察してください。
500~550g・550~600g・600~700gの見当でよろしいかと思います。
ご相談に応じます

当館の釵は、「師範用」と決められたものではありません。何方でも利用できます。
但し、「八角形・テーパー状に研削できる」という研削機械がありませんので、グラインダーでの長時間の手作業となります。最低労働賃金以下で計算していても、安い物ではありません。
誠に申しわけありません。
 居合道の有段者は、模造刀ではなくて、本物の日本刀を使用するように決められています。
古武術でも、玩具ではなくて、本物の釵を愛用なさるように、お薦めします。

 琉球古武術保存振興会・琉球古武道保存振興会などがあります。
当館も、「保存と振興」に賛同致します。

三節ヌンチャク

通常、ヌンチャクといえば、双節棍ですが、セカンドバックや、ハンドバッグに入る、小型のヌンチャクを製作しました。


かばんに入ります。

三節棍ヌンチャクです。
これは、昔から懐中携帯用として存在しています。
今回の製作は、20cmのものを3連と、15cmのものを3連の2種類です。


上から、1本目2本目 通常の双節棍
 〃  3本目4本目 L:20cmの三節棍(鉄製)
 〃  5本目6本目 L:15cmの三節棍(鉄製)

使い方は、普通のヌンチャクと同じです。
末端部を持てば、普通のヌンチャクと同じ長さになります。
末端部と中間部を、一緒に握れば、短いヌンチャクとなります。


小型の双節棍にもなります。

本来なら、重く硬い黒檀のような木材を使用しますが、入手困難なために、
直径約20mmの鉄パイプを使用しました。

卍釵

卍釵は、下の写真のような形状で、柄紐が1カ所のものと、2カ所のものがあります。
先端を尖らせれば、相手に向かって投げると、相手との距離に関係なく、突き刺さります。
それは、釵自体が回転しても、どちらかが命中するからです。
投擲武器として使用できる釵です。

最近、沖縄の又吉系の方から、下の写真形状の「卍釵」を紹介されました。
早速、製作してみました。

勉強になりました。有り難うございました。

釵のバランス

 沖縄の船越義珍先生は、文部省の要請により、体育として「唐手」を本土に持って来られました。そして、「唐手」は「空手」となりました。
船越義珍先生の門下生の平信賢先生は、「琉球古武術」を本土に持って来られました。
そして、1940年に琉球古武道保存振興会を創立して、1964年に琉球古武道大鑑(乾之巻)を発行なさいました。
琉球古武道大鑑は、①乾之巻・②元之巻・③亨之巻・④利の巻・⑤貞之巻の5巻の発行予定でしたが、①乾の巻で、終わってしまいました。
 
甲賀流忍術第14世藤田正湖師の命により、その門下の井上元勝先生は、平信賢先生に師事し琉球古武術を学びました。
井上元勝先生は、平信賢先生の説明による、琉球古武術で使用する各種の武器の全てを直接見て、市内の鉄工所・木工所に依頼して、数々の複製品製作をしました。
各種の武器がありますが、釵だけでも、大きい物・小さい物・長い物・短い物・重い物・軽い物・・・・井上空手道場の壁には、壁が見えなくなるほどにズラリと並んでいました。(現在、井上空手道場は東京都内へ移転しています)

平信賢先生は、最高直門の井上元勝先生に40余の型すべてを伝授し、栄誉ある免許皆伝第1号範士を与えました。さらに振興という観点から、型に基づいた技術体系を編むように命じました。そして、それは確立されました。

そして、井上元勝先生は、琉球古武道に関する書籍を発行なさいました。
その発行書籍は、国内最多の数々でした。
1977年発行の、「ひとりでできる入門書・琉球古武道基本技シリーズⅡ・釵術」
これには、「釵の種類」・「釵の寸法」・「釵のバランス」・「釵の持ち方」などが、図説で解りやすく記載されています。

 当館製作の琉球古武術の古武器は、こういった資料と、実際に見た現物を見本として、製作しております。

なお、
「図説 武器術」 小佐野 淳著 新紀元社発行
「秘武器の全てがわかる本」 岩井 虎伯著 BABジャパン発行
上記の2冊に、「鉄尺」が、中国武術の武器として、紹介されています。
これは、琉球古武道の釵と似てはいますが、異なるものです。

釵の変換

鉄を研削・研磨すると、日本刀のように、銀色になります。
そのままにしていると、自然と錆が発生します。
この茶色の錆をウエス等で擦る。表面は一応滑らかになる。又錆びる。また擦る。
そんな繰り返しをすると、以下の写真のようになります。

錆びないように、ペンキを塗ると、衝撃時に剥げたりします。
そこで、銀色メッキをした釵が登場しました。
形演武等で映えるので、かなり流行しました。
ところが、形演武の中にあるように、物打ちと物打ちが当たります。
対棒組手でも、物打ちに棒が当たります。
メッキは傷ついて、膜が破損して、物打ち部を掴んだときに、掌を痛めます。

そして、メッキ製品は消えました。
次に、鉄ではなくて、真鍮・亜鉛・アルミニウム等の合金製が登場しました。
鉄に比べて、強度が無くて、曲がってしまうので、強度を増すために、
太くしました。よって、重量も増えました。

しかし、本来の鉄製品は、依然として残っています。
日本人の体格の向上や、もしもの事を考えた結果。本来の物よりも、重くなりました。
大きくて、重い物ほど、武器としての威力はありますが、
元々は「隠し武器」の世界のもので、3本セットの内、2本は逆手持ちで両手に持ち、
1本は帯に差して、背中側に隠したのですから、できる限り、小型・軽量が望ましいはずなのです。

そして、「居合道の抜き打ち」のように、釵が瞬時に素早く動く。
それは、バランスが良ければ、可能な事なのです。
そして、バランスの良い釵は、持ったときに軽く感じます。

拳銃用の塗料に、「ガンブルー」というものがあります。
一端塗装して、錆を発生させて、その錆を取り除き、もう一度塗装すれば、完成です。

柄紐は、以前は「たこ糸」を使用していました。
その太さは、多種あるので、好みの太さのものを巻き付けていました。
現代は、化学繊維の紐が使用されています。
時代劇で、江戸時代の捕り物用の十手は、岡っ引きと同心は朱色、与力は紫色。
に設定されているようですが、釵は、黒色が一番似合うと思います。

沖縄より本土に上陸した「釵」は、数々の変換をしているのです。
まずは、自分の体格に合ったサイズを使用すること。
自分に合った重量のものを使用すること。
バランスの良いものを使用すること。

聞いて憶える。
見て憶える。
やって憶える。
読んで憶える。

コロナに負けずに、頑張ってください。