釵の製作

 釵の製作の材料となる鋼材には、丸・四角・六角形があります。
八角形は市販されていません。
もしあっても、テーパー状にするので、利用価値はありません。

丸棒を採用して、この鋼材を研削します。
物打ち部分は、八角形のテーパー状に。翼の部分は、円錐形状に。
柄頭だけは、四角材を採用して、切子状に。

6種類のグラインダー等を使用します。そのいずれからも火花が出ます。
夢中になって作業していて、その火が上着を破って、下着まで焦がして、更に肌を焼いて、ようやく気がついて「熱い!」と感じることもありました。
胸当てのあるエプロンを使用することにしました。
ジーンズ生地でも、火には弱くて、穴が開きます。
何カ所も当て布をして、ミシン掛け。今は雑巾のようになりました。

その鉄粉は、四方八方に飛び散り・床に落ちて、まるで雪でも降ったかのように なります。ゴーグルを使用するのですが、結膜炎になるのは、何回もあります。
その鉄粉を、そのままにしていたら、細かい部分は風にのって、他人の眼に入るかもという懸念があって、毎回の作業後は大掃除です。

最初黒色の鋼材は、銀色になります。砥石を変えて研削を続けていくと、究極の砥石で、研磨の状態にすれば、日本刀のようにピカピカになります。
しかし、そこまでの研削・研磨はしません。

300年以上の歴史があるといわれる琉球古武術。
当然その時代には、精密機械・ステンレス・メッキ・ペンキ等々は無かった!
技の中には、物打ちを握る技もあります。
あくまでも「隠し武器」です。
当館では、そのへんを考慮して、なるべくレトロ調にしようとしています。
しかし、極端な努力をしなくても、手作り品ですから、自然とそうなります。

真夏では、つらい作業ですが、秋ともなれば、絶好調です。
2本1組の完成は5日間の肉体労働です。さて、また頑張ります。

釵のサイズと重量

 釵の製作にあたり、各社の釵を購入して研究しました。
模造刀のように、合金を型にはめ込んで製作した釵は、大量生産が出来るので安価である。
鉄製の手作りのような釵は、左右一対のそれぞれの重量が異なる。同じ重量の釵は少ない。
S社の釵は、私が直接見た釵とよく似ている。しかしバランスが悪い。

 数々と製作している内に、サイズに気がつきました。
男性で、身長が約165cm~約175cmの方々は、殆ど同じサイズで適合します。
どうやら、身長の差は、脚の長さが影響していますが、上半身は余り変わらない。
ということのようです。

しかし、手のサイズは、若いときからの手の使い方なのか、体重の差なのか、かなりの差がありました。
それでも、翼の内側寸法を数ミリ変えるだけで、適合します。

 1本の釵の翼の形を、左右共に同じにしなければなりません。
同時に、もう1本も、それを全く同じにしなければなりません。
太さも重量も、その2本1組は、同じでなければなりません。
しかし、手作業で鉄を研削しますので、全く同じ、というわけにはいきません。
標準的に650gにしようと思うのですが、620,630,640等と、各種が出来てしまいます。
それでも、最近は、軽い釵を求める方が多いので、問題はありません。

 購入するのに、「一度、その釵を見てから・・・・・」という方が何人もおられます。
遠方より、わざわざ来てくれます。
600gから660gの間で完成した釵を、軽い釵から重い釵に、10組ほど並べて待っています。
それぞれに、重量の記載された荷札を付けてあります。

来られた方々は、自分が使用している釵を持参して来られます。
そして、どの方も、全く同じ反応があります。
「あれ!!軽い」
バランスが良いと、親指の上に乗っただけでも、重さを感じません。
「あれ!!どれにしようかな」
それぞれの釵の重量は異なるのですが、どれにしようかと、迷います。
何回も何回も、それぞれを手に持って、演武しますが、決められません。
雑談を交えて、約1時間が経過します。
「じゃ~、折角来たのだから、軽いこれと、重いこれ、2組を」
予定外の行動に出ます。
この時間を掛けても判断が出来かねる気持ちが解ります。

釵の製作

久しぶりに大型の釵を製作しました。
岡山県のK氏(身長184cm、体重100kg)様からです。
中央の釵が、通常の当館の製作品です。

当館のバランス釵の使用法

2月26日に、武集館道場の収録のために、静岡第一テレビが収録に来館しました。
タレントの平野ノラさん・鳥越佳那アナウンサーに釵の持ち方を披露しました。
当館の釵は、バランスが良いので、簡単に回転するはずが、できません。
真横で、ゆっくりと見本を見せたのですが、無理でした。

3月13日の放映を見て、その原因に気がつきました。
彼女たちは、最初の持ち方から異なっていました。
「落としてはならない」と思ったのでしょうか?
元(もの打ちと翼との十文字部分)の部分を親指と中指でガッチリと挟み込んで
固定していました。何もしないこの時点で、余計な力を使っていました。
次に回転させようとして、中指と薬指を離すと、その反動で釵が揺れます。
「釵が落ちるのではなかろうか?」その不安が、また元の状態に戻るようで、
先ほどよりも更に強く握り直します。今度は中指と薬指も小指まで。
今度は、回転しようとして、その三本の指を解放するのが怖くなったようでした。

 バランス釵の使用法は、そうではないのです。
親指と人差し指の間のできるV形の場所に翼を乗せて、まるでヤジロベーのようにして、
薬指と小指の第Ⅰ関節あたりが、もう一方の翼に触れる程度に持ちます。
中指は遊んでいます。人差し指は柄の部分に軽く触れています。

 何も力は入っていません。手首の柔らかい方は、そのまま柄を握るように、3~4本の指が柄の反対側に指を回して、引っ張ります。回転します。
或いは、人差し指だけでも、同じことができます。

 さ~柔らかく持って、力まずに使ってみてください。

釵の製作

最近 女性からの注文が多々あります。
鉄棒に 鉛筆を削るような作業を 二日ほど続けます。
「どのような人が使うのだろうか」などと考えながら、作業をします。
女性となると、特に滑らかになるように気を遣います。
終われば、床には 雪が降ったかのように 黒い粉が積もります。

釵の製作

当初は、身長・体重を聞いたりして、希望するサイズで製作していました。
ところが、体格の差があっても、殆どの方の釵は似たようなサイズでした。
失礼な話ですが、足の長さの差であって、上半身には大きな差がないことがわかりました。
そこで、当館の規格サイズを定めて製作をしていました。
そこで適合してくれた方には感謝します。
しかし、最近は、当館の規格サイズを、若干変えないと不都合な方も数名ございました。
そこで、希望のサイズを聞いて、それに合わせて製作することも始めました。
要するに、当初の頃の製作方法も行うということです。

最近、ご注文をされる方が希望することは、
・軽くする
・物打ち部分を短くする。
・翼の部分の幅を狭くする。
・物打ち部分の先端を尖らせる。
・バランスは、なるべく水平に近くする。
こういった内容が多くありました。

貴方の愛釵は、如何ですか?

貴方の愛釵は、如何ですか?
・サイズが適合していますか?
・重量は重くないですか?
・素早く逆手から順手に回転できますか?

A(柄の長さ):
逆手持ちしたときに、人差し指の先端が、柄頭に触れない程度が理想です。指が、柄の中に収まっていますか?
出過ぎていると、突きのときに危険です。
B(物打ちの長さ):
逆手持ちしたときに、肘より2~3cm程出るのが理想です。
それよりも短いと、上段受けのときに、肘に相手の武器が当たります。
C(翼の内側の長さ):
逆手持ちしたときに、親指が窮屈ではありませんか?あるいは、隙間が多くありませんか?
どちらも、逆手から順手に持ち替えて、裏打ちのときに、素早くできません。
居合道の「抜き打ちの一刀」のような、「瞬時の裏打ち」を素早くするには、少しの隙間の方が、スムーズにいきます。参考的な数値としては、S:40mm M:45mm L:50mmです。
D(翼の長さ):
長すぎると、引き手のときに、いつも遠慮ぎみに引くので、動作が小さくなります。
また、物打ち部分の、相手の武器を受ける部分が狭くなります。
一般的には約7cmの長さです。
E(1本の重量):
重すぎて、手首を痛めることのないようにしてください。
重いものは組手用。軽いものは形用として、2組の利用をお薦めします。
最近は、師範クラスや高齢者の方は、軽いものを選んでいます。

釵の製作の最近

各社の釵を購入したが、「これが本来の形である」という物は無かった。
そこで、自分で作り始めました。
丸棒に曲げた翼を溶接する。柄の先端に柄頭を溶接する。
物打ち部分を八角に削る。なおかつ先端に向かって細くする。
翼の部分は八角ではなく、丸く円錐形に削る。
バランスを考慮しながら、柄頭を切子状に削る。
2本1組の各々の重量を同じように調整する。
荒削り状態を、仕上げ研磨してピカピカにする。
ガンブルー塗装をする。
柄に紐を巻き付ける。
約1週間で完成となります。

総全長 約52cm
総重量 約550~700g

最近多く見かけるものは、模造刀のように、型にはめ込んだ合金製が
多種見られるが、これらのような工場生産と違って、当館では大量生産は出来ない。

釵についての問い合わせをいただく方は、殆どが高段者・師範です。
あるとき、おそらく師範であろう方からの連絡をいただいた。
「600g以下で、とにかく軽くて、先端が尖った釵を作れないか?」
やってみることにしました。
ちょっと懸念したが、意外にも注文通りの釵ができました。
高齢者には、手首の負担の掛からないように、軽い釵が良いのだと気がつきました。
更に、女性の修行者もいることを思い出しました。
今は、今までの形状ではなくて、この形状にして製作をしています。
どこかが変わっても、切子形の柄頭は、必ず付けます。


あるときは、依頼主の方が所有している釵の加工を頼まれました。
いつもの形状に加工してみたら、殆ど近い形状になりました。
できる物とできない物があるが、合金だったがなんとか完成できた。


釵製作は細かい鉄粉が鼻の中まで入り込む、研削・研磨作業です。
あまりやりたくない作業でもあります。
道場の備品のために、時々思いついたように製作作業をする。
そんな最近です。

久しぶりの釵の製作

しばらく釵の製作をしていませんでした。
男二人が、1週間もかかって作業、それが市販品より高い金額!!
これは、駄目だ!!と勝手に判断して、やめていました。

8月5日に、息子のために、どうしても買ってやりたいという、もの凄く熱心な母親が連絡をくれました。
聞けば、ネットを調べてもない!販売店へ行ったが気に入らない!買ったこともあるが使いにくい!
息子の先生が持っている釵と、同じ物が欲しいという息子の願いを叶えてやりたい、という熱意が半端ではなかったので、動かされて再開することにしました。

久しぶりにやろうとすると、溶接機が動かない!修理へ出すが、夏休みがあるので、日数がかかるという。
3種類の鋼材も各1mあればよいのだが、定尺の5.5mを買うしかない。
暑いを過ぎて、熱い!!
相棒と二人で、こつこつと毎日。
ようやく完成して、9月2日に送りました。約1ヶ月の奮闘でした。