釵の材質

「釵が曲がってしまったので、この釵より太い釵を頼みたい・・・」
というご依頼がありました。
この例は、過去にも、かなりありました。

「所有されている釵に、“磁石” をくっつけてみてください」
鉄製とステンレス製は、磁石がくっつきますが、
模造日本刀と同じ合金製のものは、磁石はくっつきません。

合金の場合は、強度があまりないので、形状を太くしています。
ですから、頑固そうに見えますが、それでも曲がります。

市販の合金製(687g)の釵を見本にして、2種類を製作しました。
⓵約・同じ太さの鋼材で、釵を製作してみました。954gでした。
約1kgで、片手で扱うには、かなりの腕力が必要です。

⓶約・同じ重量の釵を目標に、いつもの鋼材で製作しました。677gです。
研削しすぎて、約10g少なくなってしまいました。全体的に細身です。
とはいっても、昔からの標準的な太さです。
これが、当館製作の標準品(550g~700g)です。

誰もが、最初に使用した釵に馴染みます。
最初に合金製を使用しますと、太いのが当たり前のように思うようです。
本来が「隠し武器」ですから、小型・軽量が望ましいように思います。

下記は解説動画です。ぜひ、ご覧ください。

重い釵

 インターネットの動画の影響なのか、所属道場の影響なのか、
重い釵を希望の方がいらっしゃいます。
いつもとは異なる太い鋼材で、2組製作しました。
物打ちの長さを長くしたものもあります。
どれも約950g程です。

おそらく、もう少し軽くして欲しいという、ご希望があると想像します。
その時には、また研削します。

釵の重量

釵の注文を受けて、「何グラム程の釵をご希望ですか?」
という質問をすると、いくつかの回答がありました。
そして、参考になるお話も聞きました。

「軽ければ、軽いほど良い」
私が、気になって、「曲がりませんか?」と聞いたら、
「長年やっていれば、“流し”という技術が身につくから、曲がることは無い」

「大会に出場するのに、私が所属する団体には規定があって、男子は650g以上でなければならないので、それで、お願いします」

「試し割もしたいので、重いほどいいのです」

「セミナーに出席したら、殆どの方が軽い釵を持っていた。
 聞いたら、“削って軽くした”と言っていました。削ってくれませんか?」

「尖端を鋭く、突き刺さるようにして欲しい」
私が気になって「危なくないですか?」と聞いたら、
「居合道では、有段者になると、模造刀ではなくて、本物の日本刀を使用する
 ことになるが、それと一緒で、真剣みが出てくるので、それが良い」

「今、銀メッキをした模造刀のような釵が出回っているが、隠し武器なのだから、光らないで、目立たないような色合いにして欲しい。
 黒色なら、太い釵は細く見える。細い釵は重量感が出るだろう」

 平均的には、若者が重い釵。 熟練者・年配者が軽い釵。
そういう感じに見受けられました。

インターネットで、日本刀の重さを調べてみると、「800g~1.5kgで、平均は1kg」
とありました。
釵とは重心の位置が異なりますが、これを両手で扱います。

 釵は、元々が“隠し武器”で、逆手に持って相手に見せなくしておいて、瞬間に順手に変えて、攻撃する。居合道のような動きをする武器です。

武器となれば、大きい・長い・重い等が有利ですが、携帯用の隠し武器となると、
そればかりではありません。
『小が大に勝つには、スピードと技』

 時々女性からの注文もありますが、殆どが男性であるので、約600g~700gの釵を製作して、「650gより重いですか?軽いですか?」という聞き方をしていましたが、その回答は、重い方も軽い方も、殆ど同じでした。

700gを超える方がありましたので、約700g~900gの製作を追加しました。
これは、今までより材料が異なりますので、若干高くなります。
どの釵も、ピッタリと何gではなくて、約何gという重量です。

さて、貴方は何gが宜しいのでしょうか・・・・・・・・・・

ちなみに、他社製作の釵の重量を計ってみました。
1組のうち、1本は687gでもう1本は697gでした。
当館でもそうですが、2本1組をぴったり同じ重量にするのは難しいのです。
しかし、この10g程の差があっても変に感じることなく使用しているのです。

特注釵の製作

この度、特別注文の釵を製作しました。
物打ちが太い・柄が太い・柄巻きは不要、という条件でした。
「試し割用」なのか?
日本刀でいうなら、重い刀の代表の「同田貫」に相当する釵です。
なんとか完成させました。重量は1本約900gです。
(写真の右側)

釵の製作

 釵の製作の材料となる鋼材には、丸・四角・六角形があります。
八角形は市販されていません。
もしあっても、テーパー状にするので、利用価値はありません。

丸棒を採用して、この鋼材を研削します。
物打ち部分は、八角形のテーパー状に。翼の部分は、円錐形状に。
柄頭だけは、四角材を採用して、切子状に。

6種類のグラインダー等を使用します。そのいずれからも火花が出ます。
夢中になって作業していて、その火が上着を破って、下着まで焦がして、更に肌を焼いて、ようやく気がついて「熱い!」と感じることもありました。
胸当てのあるエプロンを使用することにしました。
ジーンズ生地でも、火には弱くて、穴が開きます。
何カ所も当て布をして、ミシン掛け。今は雑巾のようになりました。

その鉄粉は、四方八方に飛び散り・床に落ちて、まるで雪でも降ったかのように なります。ゴーグルを使用するのですが、結膜炎になるのは、何回もあります。
その鉄粉を、そのままにしていたら、細かい部分は風にのって、他人の眼に入るかもという懸念があって、毎回の作業後は大掃除です。

最初黒色の鋼材は、銀色になります。砥石を変えて研削を続けていくと、究極の砥石で、研磨の状態にすれば、日本刀のようにピカピカになります。
しかし、そこまでの研削・研磨はしません。

300年以上の歴史があるといわれる琉球古武術。
当然その時代には、精密機械・ステンレス・メッキ・ペンキ等々は無かった!
技の中には、物打ちを握る技もあります。
あくまでも「隠し武器」です。
当館では、そのへんを考慮して、なるべくレトロ調にしようとしています。
しかし、極端な努力をしなくても、手作り品ですから、自然とそうなります。

真夏では、つらい作業ですが、秋ともなれば、絶好調です。
2本1組の完成は5日間の肉体労働です。さて、また頑張ります。

鉄甲の製作

主軸の資材を3種類で製作しました。
鉄パイプ:肉厚3mm直径25mmの鉄パイプで製作してみました。重量は、約350gです。
丸棒:直径22mmの鋼鉄丸棒で製作しました。重量は、約400gです。
当館独特の異形鉄筋製も製作しました。
遊び心で、忍者の武器を模倣したものも製作しました。重量は、約450gです。
いずれ、これらは、釵の購入者にプレゼントすることになるでしょう。

前回の鉄甲の製作について

 前回の鉄甲の製作【2020.06.10】で、本来は、使用者の手のサイズに合わせて製作する。
もしも、少し大きいとかの、若干の不具合のときには、ある細工をすると、適合すると記載しました。
 その一つの方法は、写真にあるように、鉄輪の上下に、釵で使用する紐を巻き付けます。
今回は、いつもの5ミリの太さの紐ですが、その時に応じて、太い物・細い物を選べば、各自の都合の良いサイズになります。
 鉄甲製作後に、各自がこれを行えば、製作する方は、事前に製作しておくことができます。
即ち、製作コストが安くなります。
サイズの指定を受けて、製作するのは、意外に神経を使います。そして、やり直しを行うこともあります。

釵のサイズと重量

 釵の製作にあたり、各社の釵を購入して研究しました。
模造刀のように、合金を型にはめ込んで製作した釵は、大量生産が出来るので安価である。
鉄製の手作りのような釵は、左右一対のそれぞれの重量が異なる。同じ重量の釵は少ない。
S社の釵は、私が直接見た釵とよく似ている。しかしバランスが悪い。

 数々と製作している内に、サイズに気がつきました。
男性で、身長が約165cm~約175cmの方々は、殆ど同じサイズで適合します。
どうやら、身長の差は、脚の長さが影響していますが、上半身は余り変わらない。
ということのようです。

しかし、手のサイズは、若いときからの手の使い方なのか、体重の差なのか、かなりの差がありました。
それでも、翼の内側寸法を数ミリ変えるだけで、適合します。

 1本の釵の翼の形を、左右共に同じにしなければなりません。
同時に、もう1本も、それを全く同じにしなければなりません。
太さも重量も、その2本1組は、同じでなければなりません。
しかし、手作業で鉄を研削しますので、全く同じ、というわけにはいきません。
標準的に650gにしようと思うのですが、620,630,640等と、各種が出来てしまいます。
それでも、最近は、軽い釵を求める方が多いので、問題はありません。

 購入するのに、「一度、その釵を見てから・・・・・」という方が何人もおられます。
遠方より、わざわざ来てくれます。
600gから660gの間で完成した釵を、軽い釵から重い釵に、10組ほど並べて待っています。
それぞれに、重量の記載された荷札を付けてあります。

来られた方々は、自分が使用している釵を持参して来られます。
そして、どの方も、全く同じ反応があります。
「あれ!!軽い」
バランスが良いと、親指の上に乗っただけでも、重さを感じません。
「あれ!!どれにしようかな」
それぞれの釵の重量は異なるのですが、どれにしようかと、迷います。
何回も何回も、それぞれを手に持って、演武しますが、決められません。
雑談を交えて、約1時間が経過します。
「じゃ~、折角来たのだから、軽いこれと、重いこれ、2組を」
予定外の行動に出ます。
この時間を掛けても判断が出来かねる気持ちが解ります。

鉄甲の製作

本来は、使用者の手のサイズに合わせて製作するのですが、およそのサイズを想定して、4組を製作しました。
(もしも、少し大きいとかの、若干のサイズ不具合のときには、ある細工をすると、適合するという方法を知ったので、先攻製作です)
心棒には、鉄パイプか丸棒を使用するのが普通ですが、物に当たったときに、その衝撃で、掌の中で回転しないように、異形鉄筋棒を使用しました。
この棒を握ると、しっかりと固定されます。
 重量 : 約450~480g(1個)
刃が無いので、銃刀法には触れない。車に載せておく。
もしものときには、緊急脱出用ハンマーと同様に、窓ガラスを割って車から脱出する。
これぞ本当の護身用!?!?!?

ティンベー製作

前回製作の平板ではどうも・・・・・と思って、曲げ加工のできる板で再び製作しました。
衝撃時の金属音が響かないように、表面にクッション加工をしました。
サイズ 約59cm×42cm   重量 約1230g